育ちのこころ2022年11月号
 【ママやパパたちへ】 11月育ちのこころ
「ゴールが一律でない素晴らしさ」
 
10月の園からこんにちはでお伝えした、「乳幼児期は、『ゴールが一律に決まっていない』時期」の続きです。それを、「積み木」で例えてみましょう。
「幼稚園」は、ドイツの教育者フレーベルが「神さまが子どもの内に宿してくださった力を引き出す」教育観によって、初めて創ったところです。英語で幼稚園は、「Kindergarten」(子どもたちの庭)。子どもたちがすこやかに育つよう、水や肥料をやり、大切に子どもを育てようと願いが込められています。
そして、フレーベルは、子どもの内的力を引き出す教材として「積み木」を重視しました。
子どもたちの想像力を高め、子どもたちが自由に思い思いに積み木で作ることをフレーベルは大切にしたのです。
そのフレーベルが始めた幼稚園は、やがて日本にも伝えられ、明治9 (1876)年に,東京女子師範学校(現在のお茶の水女子大学) 付属幼稚園が日本の最初の幼稚園となりました。
さて、その日本で最初の幼稚園で積み木も導入されたのですが、それは「恩物(おんぶつ)」と呼ばれました。そして、子どもたちは机に向かって、マス目が書かれた紙の上に、先生が言う場所に積み木を置いたのでした。
この違いはどうでしょう!同じ積み木でも、その使い方によって、子どもにとっては随分と違うものになってしまったのです。
フレーベルの積み木は、「何を作るかは、子ども自身が決める」ものでした。つまり、『ゴールが一律に決まっていない』活動です。
一方、日本で初めての幼稚園での積み木は、「先生が示した場所に置く」ものとなりました。これは、『決められたゴールに向かって取り組む』活動です。
明治政府が始めた学校教育は「富国強兵」策の一環で、国に役立つ人材を育成するものでした。だから、どうしても『決められたゴールに向かって取り組む』教育になってしまいます。そして、残念ながら令和の時代も今も、日本の公教育は『決められたゴールに向かって取り組む』ことから脱却できないでいるのです(「運動会」も、兵隊さんの能力を競うための行事がルーツです)。
でも、社会が求める人材は、どんな人材でしょう。
それは、「自分でゴールを設定し、取り組む力」「もしゴールが間違っていたら、それを修正できる力」です(もちろん、基礎的な能力は必須ですが)。「乳幼児期は人格形成の基礎」と言われるゆえんがここにあります。そして、だから「あせらなくても大丈夫。子どもたちはそれぞれのゴールに向かって歩んでいますよ」と、お伝えしたいと思います。
12月号では、「体験の大切さ」についてお伝えしたいと考えています。
乳幼児期には、「体験貯金」が大事です。
(園長:飯塚拓也)
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