9月の育ちのこころ
「子どもの育ちを考えよう②」 
「赤ちゃんの一日は、大体、おとなの三十日分。三歳の子の一日は、おとなの十五日分。~。」
7月の育ちのこころで紹介したことです。思い出してくださいね。
これは、「乳幼児期の尊さ」を言い表してる文章です。
そして、この「乳幼児期の尊さ」は、「乳幼児期が人生の基盤(根っこ)」となるからです。
私たちにとって、「乳幼児期をどのように過ごしたのか」は、その後の人生において決定的な意味を持つのです。

先日、またも残念なニュースが報道されていました。東京メトロの駅で、25才の大学生が22才の男性会社員に硫酸をかけて重症のやけどを負わせたという事件です。ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。
この事件には、二人は大学時代に接点があり、その大学時代に「悪い態度」「タメ口」をされたことへのうらみがあったと言われています。つまり、数年前に気に入らないことをされたことを、ずっと根に持っていて、その恨みを晴らす機会を探っていたというのです。
私たちには、ちょっと信じられない動機です。
数年前のことを今も根に持っているなんて。しかも、「悪い態度」「タメ口」程度で。
この事件に対して、日米で多くの凶悪犯とやりとりしてきた国際社会心理学者の阿部憲仁先生は、その犯行の動機について「凶悪犯罪の根底には、幼少期の「愛着障害」が存在する」と指摘しています。
そして、こう続けています。
「確かにここ10年で両親を失ったことは彼の生活をより孤立的なものにしたことは間違いないでしょう。しかし、それまでに十分な愛情がこの容疑者に掛けられていたならば、その愛情の『貯金』でその後に起こることにも普通に対応できたはずです。」
阿部先生はこの事件の背後に、容疑者の幼少期の「愛着障害」があることを指摘しているのです。

「乳幼児期をどのように過ごしたのかは、その後の人生において決定的な意味を持つ」ことを、もう一度思い起こしましょう。
誰だって嫌なことはあります。気に入らないこともあるし、忘れたくても忘れられない体験は、みんな持っていることでしょう。でも、ほとんどの人は、だからといってその腹いせを人に向けることはしません。
それはなぜ?
そこに「幼い時に、十分な愛情を受けてきたかどうか」があることを、私たちは覚えておきましょう。
そして、私たちの子どもたちは、「今まさにその乳幼児期に生きている」のです。かけがえのない大切なその乳幼児期に「愛情を十分に注ぐこと」が、子どもの育ちの第一歩です。
[園長:飯塚拓也]
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